2020年にオリンピックが開催される東京は本当に暑くなっているのか?

  日本を含め、ここ数週間は世界各地を熱波が襲っています。西日本の集中豪雨による被害で避難生活を強いられている被災者にとっては、命にかかわる暑さになっています。

  この熱波による影響で、「2020年の東京オリンピックはこんな暑さの中で開催しては危険」「秋に開催するべき」という声がSNSを中心に大きくなっています。

  「昔はこんなに暑くなかったが、ここまで暑くなると危険」という声を、気象庁による東京の気温データを用いてざっくりと検証してみましょう。

  まず、「危険な暑さ」とはどれくらいの気温を指すのでしょうか?

  公益財団法人日本スポーツ協会による運動指針では、以下のように区分されています。

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  東京その他の主要都市におけるWBGT指標(暑さ指数)については、環境省NHKのサイトで知ることができますが、ここでは気温を目安にします。

  まず、暑さ指数で「激しい運動は中止」とされる気温(31℃)に最も近い値を目安に、過去に東京の日最高気温が30℃以上になった日数の変遷を見てみます。

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7月と8月の東京における日最高気温30℃以上(真夏日)の日数(1876年~2017年)。データ: 気象庁

  上のグラフは、1876年から2017年までの7月と8月(オリンピック開催期間が7月末から8月初旬なので)に、東京で日最高気温が30℃以上になった日数を表しています。一見した印象ではわかりづらいですが、トレンドライン(傾向)を見ると、昔よりも真夏日が増加していることを確認できます。

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  これは、先程と同じデータから、年代毎の平均日数を算出したグラフです。2010年代(2011年~2017年)は、合計日数を7年で割ってあります。昔に比べ、大きく増加している印象は受けませんが、前回の東京オリンピックが開催された1960年代と比較すると、東京における真夏日は1.1倍になっています。

  では次に、暑さ指数で「運動は原則禁止」とされる35℃以上(猛暑日)の日数を確認してみましょう。

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7月と8月の東京における日最高気温35℃以上(猛暑日)の日数(1876年~2017年)。データ: 気象庁

  近年の日数にばらつきはありますが、先程の真夏日と比較すると、猛暑日の増加の方が著しいことがわかります。

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  そしてその傾向は、年代毎の東京における7月と8月の猛暑日の平均日数を見るとより顕著です。特に、1990年代以降の増加ぶりが目立ちます。

  前回の東京オリンピックが開催された1960年代の年平均日数が2.2日だったのに対し、2000年代には2倍の4.4日、2010年代は2.7倍の5.9日まで増加しています。

  「7月と8月を合わせても猛暑日が6日しかないなら大丈夫」と軽く考えると、たとえ体調の調整や健康管理が徹底されている選手は大丈夫でも、競技を観戦する一般の人たちは健康を害する恐れがあります。

  特に、体温調整が比較的難しい子どもや高齢者、体調がすぐれない人にとっては、暑さ指数や気温が低くても、熱射病にかかる危険性が高くなります。

  気候変動によって熱波の頻度と激しさは増加傾向にありますが、2020年に猛暑日が増えるのか減るのかはわかりません。冷夏になるかもしれませんし、猛暑になるかもしれません。でも、主催者は最悪の場合を想定して、準備を整えなければなりません。人命にかかわるケースにおいて「想定外」は許されないはずです。

  世界トップレベルのアスリートたちによる質の高いたたかいや、アスリートと観客の健康を第一に考えるのならば、現在よりも涼しかった前回の東京オリンピックと同じように秋に開催するのがベストのはずなのですが、秋は欧米のスポーツ中継が盛んになるため(アメフトとサッカー)、テレビの放映権料が大きなウェイトを占める「商業オリンピック」は、真夏に開催する以外の選択肢はないようです。

  「収入」と「競技参加者や観客の健康」を天秤にかけて、迷うことなく収入を選択するのが近代オリンピックの特徴と言えそうです。


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