【トランプ政権】 キーストーンXLパイプラインの建設を認可

  アメリカのドナルド・トランプ大統領は3月24日、1月の就任直後に出した大統領令で触れていたとおり、バラク・オバマ前大統領が2015年に建設を却下したカナダとの国境を越えるキーストーンXLパイプラインの建設を認可する意向を表明しました。

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キーストーンXLパイプラインの建設予定ルート。Credit: Vox

  カナダのアルバータ州から米国境をまたぐ、カナダの「トランスカナダ社」が運営する全長約1,900kmのパイプラインは、完成すれば1日あたり約83万バレルの原油を米ネブラスカ州まで輸送し、その後原油はメキシコ湾に面するテキサス州やルイジアナ州などの石油精製施設へ運ばれる計画でしたが、国境を越えるパイプラインの建設には通過する州だけでなく国務省の認可が必要だったため、環境影響評価に7年を費やした後、2015年にオバマ政権がアメリカ経済に好影響を与えないことと気候変動対策を理由に建設を却下していました。

  政権移行後に一転して建設認可を表明した国務省は、外交、エネルギー安全保障、環境、文化、経済効果、関係法令と政策などを幅広く検討した結果、キーストーンXLパイプラインの建設はアメリカに好影響をもたらすという結論に至ったと述べています。

  ホワイトハウスは、声明でキーストーンXLパイプラインは4万2千人の雇用を生み出すと主張していますが、国務省は英インディペンデント紙とのインタビューで、建設完了後の雇用見込みはフルタイム35人と一時的な業務委託15人の合計50人になることを認めています。

  なお、トランプ大統領はパイプラインの新規建設に極力アメリカ製の鉄などを使用するように命じていましたが、キーストーンXLパイプラインに使用されるパイプ等の資材は調達ずみであるため、少なくとも一部は米国以外の製品が使われる見込みです。

  今回、国務省はパイプライン建設を認める判断を下しましたが、今後すんなりとパイプライン建設が完了し、原油の輸送が始まるのかというと、決してそうではありません。パイプライン建設事業主体であるトランスカナダ社は、パイプラインが通過するモンタナ、サウスダコタ、ネブラスカの各州と土地所有者から建設の認可と同意を得る必要があります。ところが、前回の建設申請時の経緯を踏まえると、とても一筋縄ではいきそうにありません。

  トランスカナダ社は1月の大統領令を受け、2月にネブラスカ州の公益事業委員会に対してキーストーンXLパイプライン建設認可申請を済ませていますが、サンドヒルズ地域と、日本の国土よりも大きく世界最大級の地下水層で重要な水源であるオガララ帯水層の汚染を懸念して反対運動を展開した、先住民グループをはじめとする地元住民や環境保護団体、他地域の市民による激しい抵抗が見込まれています。

  ブルームバーグ紙はレポートで、環境保護活動家らが今回の国務省による建設認可の判断が性急すぎることやオバマ政権時の古い情報分析が用いられことなどを理由に、連邦裁判所への訴訟を含め、建設阻止に向けてあらゆる手段を準備中であると伝えています。

  また、トランスカナダ社のパイプライン建設認可申請を受け、現在ネブラスカ州公益事業委員会では210日間のパブリックコメント募集期間に入っていますが、すでに複数の環境保護団体が認可プロセスへの参加を同委員会に希望するなど、決着までの道のりは遠そうです。

  このような反対運動が建設着手から完成への妨げになると予想される一方で、シェールブームによる原油価格の低下(現在は1バレル約50ドル)と、再生可能エネルギーの競争力が上がってきたことに加え、高コストのオイルサンド採掘による原油生産が利益に繋がらないために事業から撤退または事業を縮小する石油・ガス企業も出始めていることから、経済効果を疑問視する声も聞かれます。

  経済や気候変動への影響も深刻ですが、ダコタ・アクセス・パイプラインと同様に、キーストーンXLパイプラインも先住民や人種的マイノリティ、低所得層に対する深刻な環境正義問題でもあります。

  気候変動対策と先住民グループとの関係改善を声高にアピールしているカナダのトルドー首相は、以前からキーストーンXLパイプラインの建設を支持してきましたが、オイルサンド採掘のための乱開発と採掘時の水資源の大量消費、それに伴う環境汚染に健康問題の影響は、先住民や貧しい人たちに偏っています。カナダの120以上に及ぶ先住民グループが人権と伝統的な土地の権利を守るための条約に署名をしています。

  前回のキーストーンXLパイプライン建設反対運動は、気候サミット開催前に40万人が参加したニューヨークでのクライメートマーチからパリ協定合意達成までの勢いを生み出し、スタンディングロック・スー族をはじめとする先住民グループによるダコタ・アクセス・パイプライン建設に反対する市民運動に繋がってきました。

  アメリカとカナダの先住民グループ、環境保護団体、土地所有者、そしてダコタ・アクセス・パイプライン建設への反対運動に加わった様々なバックグラウンドを持つ人たちや世界中のサポーターによって、パイプライン建設予定地付近での抗議活動や各地での抗議デモ、キーストーンXLパイプラインの建設プロジェクトに投融資を行っている金融機関の口座解約や資金の引きあげなど、歴史的規模の反対運動が展開されることになるでしょう。

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