先住民の若い世代には気候変動による環境の変化が普通になってきているという研究結果  米アラスカ州


  これまでに、気候変動による海氷の減少や永久凍土の浸食などによって米アラスカ州で先住民の町が移住の危機に瀕しているという記事いくつか書いてきました。また、米本土のルイジアナ州では、連邦政府と州政府の援助を受け、先住民がコミュニティ丸ごと気候難民として移住することが決まっています。

  本土と比較して約2倍の速さで気候変動が進むアラスカ州の先住民にとって、温暖化はいま目の前にある危機です。しかし、世代間でその影響の感じ方が変化しており、若い世代は温暖化によって変化している気象現象を普通だと感じるようになってきているという研究結果(Herman-Mercer et al. 2016)を、米国地質調査所などの研究チームが科学誌「Ecology and Society」に発表しました。

Herman-Mercer et al 2016 - Fig 1 - Study Area.jpg
聞き取り調査を行った地域。Source: Herman-Mercer et al., 2016

  研究チームは、米アラスカ州西部のベーリング海に面するふたつの地域(ChevakとKotlik)と、ユーコン川沿いのふたつの地域(Pilot StationとSt. Mary's)で聞き取り調査を行いました。

Herman-Mercer et al 2016 - Fig 2 - Interview participants by community, age, and region.jpg
それぞれの地域で聞き取り調査を行った年齢層と人数。Source: Herman-Mercer et al., 2016

  研究チームは、4つの地域において4つの年齢層の合計51人を対象に行った聞き取り調査で、季節ごとに感じる気候変動の影響について質問をしました。

Herman-Mercer et al 2016 - Table 2 - Intergenerational observations of change by season.jpg
季節ごとに気候変動の影響を感じるかという質問に対し、変化を感じると答えた人数とその割合。
Source: Herman-Mercer et al., 2016

  冬と夏が特に気候変動の影響を感じると答えた人が多く、それぞれ69%と59%でしたが、春と冬には影響を感じる人が少ないようです。

Herman-Mercer et al 2016 - Table 3 - Observations of changing winter conditions by age cohort.jpg
年齢層ごとの、気候変動による冬の気象現象の変化を感じると答えた人とその割合。
Source: Herman-Mercer et al., 2016

  冬の気象現象に気候変動の影響を感じると答えた18歳から29歳のグループに属する人は22%でしたが、65歳以上のグループは88%が変化を感じると答えています。

Herman-Mercer et al 2016 - Table 4 - Observations of changing summer conditions by age cohort.jpg
年齢層ごとの、気候変動による夏の気象現象の変化を感じると答えた人とその割合。
Source: Herman-Mercer et al., 2016

  冬よりは違いが小さいものの、夏の気象現象の変化についても、18歳から29歳のグループが最も感じないようになってきています。

  冬の方に顕著な違いが見られるのは、海氷の減少や川の凍結状況の変化、雪の日の減少と雨の日の増加など、四季の中で変化が最もわかりやすいからだと思われます。

  高年齢層は、子ども時代と比較して海氷に覆われる面積が減少し、氷も薄くなるなど著しい変化を経験していますが、若い世代にとっては子どもの頃から海氷も川の凍結も少なく、雨の日が多い冬を経験してきているので、それが気候変動の影響だという感覚がないようです。

  また、30代以上のグループは年配の人たちから将来雪が降らなくなる日が来るなどの気候変動の影響が必ず起こるという話を聞かされてきましたが、若いグループにとってはもうそれが普通になってきているため、年配の人たちからそのような話を聞く機会もなくなり、おとぎ話のようになっていると聞き取り調査を受けた先住民のひとりが答えています。

  今後は、このような聞き取り調査を踏まえたうえで、早い段階でアラスカ州の先住民グループの移住計画を立てる必要があるでしょう。

  もうそれは遠い未来ではなく、このままでは近い将来に間違いなく起こることなのですから。

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【参照文献】
Herman-Mercer, N. M., Matkin, E., Laituri, M. J., Toohey, R. C., Massey, M., Elder, K., … Mutter, E. A. (2016). Changing times, changing stories: generational differences in climate change perspectives from four remote indigenous communities in Subarctic Alaska. Ecology and Society, 21(3), art28. http://doi.org/10.5751/ES-08463-210328

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